夢のスケッチ

いつも持っているキーホルダーに見慣れない鍵があるのに気づいた。
その鍵を握りしめて、祖父の家があった坂道を歩く。
坂の上からさびれた製鉄所と造船所を見下ろすと、かつての軍港が見える。

この町の人々はどうしても戦争を終わらせたくないようだ。しがみついてしがみついて、生きている人も死んでしまった人も、戦争がいまだに全てなのだ。もう終わったんだから、終わりにしない?

祖父の家は他人の手に渡り、玄関の位置も変えられて、昔の面影は見られない。外壁は窓も全て塗り固められ、生活感が伝わってこない。

握りしめていた鍵で実家の裏口から中に入り、トイレに入ると昔のままなので、懐かしかった。

私はどうしてここの鍵だとわかったのか、ぼんやりと廊下を歩くと妹が外から帰ってきた。この家は両親が亡くなったので妹の家になったのだ。

妹とはいつから会っていないのか、わからないくらい会ってない。
両親とのいざこざで妹とも疎遠になっていたから。
意外にも妹は機嫌がよく、肌艶も良く年齢を感じさせない若い笑顔だった。

なんだかほっとして二人で窓の外を見た。川が流れていて、家の下が石垣になっている。川は昔からしっかりした石垣に囲まれていた。

この町に住む家族は妹だけになってしまった。うっとうしいくらい賑やかで、集まって大騒ぎしたり、時には大喧嘩になったりした親戚たちもいない。

妹と外を眺める窓に注ぐ光はやさしく綺麗だった。妹も元気そうでよかった。

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考察

若い時の時間は比較的ゆっくり進むが、ある時点を過ぎると急速に進み始める。
高齢者がよく「気持ちだけは20歳」などと冗談のように言うのを聞くが、今、自分が若くない年になってくると、それが冗談ではないということに気づき、愕然とする。

仮に、今のままの意識で20歳に逆戻りしたら、今と何が違うというのだろうか。今後起こる出来事を知らずに過ごしているというだけではないだろうか。体だけが年老いていく…。

そしてそのことは死んでも適用される。

あの軍港だった町でもう死んでしまった人たちも、まだ20歳のまま生き続けている。だからあの町はいつまでも救われない。終わりになどできないのだ。

今回の夢のスケッチは現実にもありそうな話だが、現実にはあり得ない。

祖父の家もかつての実家にも私は行けない。
それどころか、あの町にも足を踏み入れることはもうない。

妹とも笑い合えるような日が来るとは思えない。私と妹とは10代の頃家族で暮らした記憶のまま止まっている